私たちの惑星、この地球上には、約10万頭の海棲哺乳類・ジュゴンが生きています。
ジュゴンは太平洋の西側からインド洋にかけて分布していますが、その生息地は太平洋ではオーストラリアが南限、日本列島の南西端にある沖縄が北限です。インド洋では、アフリカ東海岸のモザンビークにまで及んでいます。しかし、象と同じ祖先を持つと推定されている、海草(ウミクサ)を食べる穏やかな性質のジュゴンは、残念なことに全体として減少傾向にあります。とりわけ沖縄のジュゴンは、一時は絶滅したと見られたほど少数で、かつては奄美から琉球列島沿岸域各地で見られていましたが、海洋環境の悪化や漁網による「混獲」で数を激減させ、今では沖縄島東海岸周辺海域に、わずか10数頭から50頭以下の地域個体群が生き残っていると推定されています。
沖縄島に最も近い生息地は、南へ約1000キロメートルも離れたフィリピンで、台湾ではすでに1960年代に絶滅したようです。この希少な「北限のジュゴン」は、日本の天然記念物に指定されただけで、生存を保障する適切な保護を受けないまま放置され続けてきました。第二次大戦後27年間、米軍の統治下にあった沖縄は、1972年に日本に復帰しました。しかし復帰はしたものの、日米安保条約(日米軍事同盟)体制の下で、日本全土の米軍基地の実に75%(面積比)が沖縄に集中しています。そのため、沖縄の住民は、基地被害に苦しみ続け、止むことのない米軍の演習は、沖縄の自然を破壊し続けてきました。それだけではありません。復帰以来、急激に進行した経済開発が、沖縄の海を極度に汚染し、ジュゴンの生息地を狭めてきたのです。しかも、かろうじて生き残ったジュゴンは今や新たに降りかかった災厄によって、生存の根を絶たれようとしています。
2002年7月29日、日本政府は、沖縄島中部・宜野湾(ぎのわん)市にある米軍の海兵隊基地、普天間(ふてんま)飛行場の代替施設を、同島北部ヤンバル(山原)の東海岸にある小さな集落・辺野古(へのこ)沖合いの環礁(リーフ)上に建設する計画を正式に決定しました。ところが同海域は、最近ジュゴンが最も多く目撃されているところで、重要な繁殖地でもあると考えられている場所です。新基地の建設が予定されているリーフ一帯には、ジュゴンの食物であるリュウキュウアマモなどの海草が豊かに群生しており、辺野古沿岸の海域は、「北限のジュゴン」にとって事実上《唯一の安息の場所》なのです。全長2500メートル、幅約730メートル、面積約184ヘクタール(滑走路は2000メートル)の巨大な軍事空港の建設は、埋め立ての際の莫大な土砂・砕石の投入によって、リーフ内外の海水を汚染し、長い時間をかけて形成されてきた付近一帯の繊細な生態系を破壊してしまいます。また長期にわたる建設工事に伴う騒音によって、ジュゴンは、この海域から追い出されてしまうでしょう。これでは、国際保護動物である「北限のジュゴン」は絶滅してしまいます。
これまで、日本の自然保護団体をはじめ、IUCN(国際自然保護連合)およびUNEP(国連環境計画)など環境関係の国際機関が、この軍事基地建設計画に深い危惧と憂慮を表明し、日本政府に対してジュゴンの保護を強く要求してきました。しかし日本政府は、いまだ適切な保護策を実施していません。
以下に署名する私たち、地球市民は、心を一つにして、日本政府に対し次のことを要求します。 |
1「北限のジュゴン」の生息地を破壊する米軍基地建設計画を撤回してください。
1 日本政府の責任で沖縄のジュゴンを保護する対策を至急実施してください。
日本国内閣総理大臣 小泉 純一郎 様
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